42〜49歳
40 代も後半にさしかかると、更年期障
害によるさまざまな症状をかかえる
ようになります。女性の鍼灸来院患者で痛
みの疾患以外で最も多いのも、更年期障害
です。東洋医学では「血の道症」ともいわ
れ、更年期障害は「気(生体エネルギー)」と
「血」がともに異常を起こしている状態と捉
えられています。
 一方、西洋医学では、性ホルモンの生産
力低下に伴い、種々の機能低下が起こり、
たとえば動悸、眩暈、胃腸障害、記憶力減
退、腰痛、冷え上せなどの症状が現われる
と説明しています。たしかに、この低下した
ホルモン剤を投与することでこれらの症状
はよくなりますが、副作用が大きな問題です。
 ところが、鍼灸には全身の歪み(アンバ
ランス)を調整する働きがあり、一度低下
したホルモン生産機能を少し取り戻すこ
とができます。失った機能を取り戻すので
すから、副作用の心配もまったくありませ
ん。顔のつや、肌の筋肉の張り具合、お腹
や脈の状態から診断し、微妙な鍼の刺し加
減や刺激の仕方で、全身の調整をしていき
ます。ですから、肩こりの治療のために鍼
灸を行ったら、便通がよくなったり、足の
冷えがなくなったというようなことと、一
度止まった生理がまた始まったということも
しばしば見受けられます。もちろん歳をとっ
て歪みがどんどん大きくなれば、鍼灸だけで
対応するこどはできなくなりますが、老化
のスピードを遅らせ。更年期障害のさまざ
まな症状を和らげる働きが鍼灸にはあるの
です。若さを保つためにも、フィットネス
クラブに行くような気持ちで、気軽に鍼灸
を行ってはいかがでしょうか。
黄帝内経には、「42歳になると3つの
陽経の脈はすべて衰えてしまい、それ
故に顔面部はまったくやつれ、頭髪も
また白くなりはじめる」と書かれてい
ます。


生理学
 中年肥りといわれるように、身体の線
が崩れたり、長年の生活習慣やストレ
スなどのせいから高血圧や心臓病、ガ
ンなどの成人病患者が増える年代です。
経路上にあるエネルギー
(気と血)が渋りやすいと
ころをツボ(経穴)という
ホルモンと東洋療法
 更年期は女性である以上避けて通れないもので、人によりそ
の症状はまちまちで、軽くすんでしまう人もいれば、寝込んで
しまうほどひどい人もあります。
 加齢ラットを使った実験では、加齢による発情周期の延期や
乱れはプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌減退が原因とさ
れ、プロゲステロンの投与によって前述の症状は消失します。
鍼灸では、百会と京門というツボを刺激することで不定愁訴を
解消できることから、鍼灸にはプロゲステロン産生産力を回復
させる働きがあると考えられています。また、加齢ラットの運
動障害は中枢神経伝達物質のL−ドーパの投与により著しく回
復しますが、鍼灸によっても同様の改善が認められています。
 副作用の恐れのあるホルモン投与に比べ、本来生体に備わっ
ている力を使う鍼灸治療は安心して行えると同時に、更年期障
害のあらゆる愁訴や肩こり、腰痛、ストレス解消といったこと
に同時に対処できるので、この時期の女性には最適の治療法だ
といえます。