14〜21歳
ポーツで活躍する中・高校生ともな
ると、高度で激しい動きが求められ
るようになり、練習中に骨や筋を痛めるこ
とも少なくありません。痛みというのは客
観的に測定できないため、西洋医学では痛 みに対する臨床は比較的不得意です。その ため、プロのスポーツ選手を含め、痛みを
主訴とする患者の多くが鍼灸院を訪れます。
 スポーツによる代表的な障害は、捻挫、
肉離れ、テニス肘(上腕骨外側上果炎)、ゴ ルフ肘(上腕骨内側上果炎)、膝関節炎など の靭帯や腱・筋肉の過伸展・部分断裂・炎
症によるものや、筋肉の疲労による腰痛、
頸肩背部痛などです。いずれも筋肉・腱(筋 肉が骨につく両端の方の組織で、筋肉の一 部である筋腹の部分と組織が違う)・靭帯
などの軟部組織を酷使しすぎて起こるもの、
筋肉の疲労によるものがほとんどです。
 これら軟部組織患部に直接アタックでき
る唯一の方法が鍼治療です。皮膚から薬剤
を塗っても、実際に筋肉にまで浸透する割
合は少なく、かぶれなどの副作用も気にな
ります。その点、鍼治療は組織を損傷する
ことなく、安全に行うことができます。
 現代は、運動不足のために筋肉や骨が弱
くなり、体育の授業中や転んだだけでも、
骨折する生徒が増えていますが、骨折も鍼
ではやく治すことができるのです。もちろ
ん、整形外科での治療と並行して行うわけ
ですが、ギプスを完全に固定する必要がな
い場合、適度な固定(取り外しができる程
度)をしつつ鍼治療を行うと、単に固定を
するだけの場合よりも数段治りがはやくな
ります。また、筋肉の萎縮もないので、骨折 が治ってからのリハビリ期間も短く、後遺
症としての変形もなく、普通の生活にはや
く戻ることができるのです。
 黄帝内経には、「14歳になると天癸
発育・成熟し、任脈はのびやかに通じ、
太衝の脈は旺盛になって、月経が時に
応じてめぐってきて、子供を産むこと
ができるようになる」と記されていま
す。

生理学
 17〜18歳の間に卵巣が大きくなり、
19歳頃には乳房も十分成熟し、骨盤も
広がり、正常な妊娠出産が可能になり
ます。


※天癸とは先天の気である腎気の蓄積が極ま
って生じたもので、この成熟した微候は女
性では月経をさす。
胸部硬膜外麻酔
痛みと東洋療法
 私たちの身体の中には、痛みを起こしていろいろな危険信
号を発してくれるヒスタミン、ブラジキニンなどの「発痛物質」
と、痛みを抑えてくれるエンドルフィン、ノルアドレナリン、
セロトニンなどの「鎮痛物質」があります。エンドルフィンは
大脳中枢で形成される物質で、強力な鎮痛剤であるモルヒネの
数百倍もの鎮痛効果があるといわれています。
 鍼治療には、これら鎮痛物質を中枢で大量産出させる働きが
あり、痛みをとる際に通常用いる麻酔薬のかわりに鍼麻酔が行
われることもあります。麻酔薬ミスが生命の危機をもたらすこ
とがあるように、麻酔薬は少しでも使い方を誤ると恐ろしい結
果になります。しかし、鍼麻酔では痛覚だけが消え、他の機能
や意識はすべて正常に働くので、安心して使うことができます。
 そういうわけで、スポーツ選手にとって鍼治療は無くてはな
らない役割も果たしており、実際、鍼灸院では多くのスポーツで
身体を傷めた青少年の姿が見受けられます。